2009年7月5日

C-extension (6)


一旦分解してから、各パーツの仕上げを行う。機能的に優れていても見た目が悪ければ、価値は半減してしまう。半減は大げさかもしれないが、少なくとも手触りが良かったり、表面が綺麗であることによって、使う喜びは増すのではないだろうか。

カポの動きの固さが均等になるように調整し、調弦の具合などを確認する。エクステンションの辺りは、普通なら演奏中に手がいかない場所である。慣れないと、ペグの取っ手などに手が当たり易い。ペグ以外にも、ナットのG線側の角は、ヒットしやすい場所のように思う。試奏しながら、可能な範囲で、手に当たりそうな場所の面の形を修正する。

あからさまに丸くすると形がだれるから、ほどほどにするが、演奏中
の手はとても速く動く事があるから、怪我への配慮は必要な事ではないだろうか。この楽器は問題無かったが、チューニングマシンのプレートの端が浮き気味になっているような楽器では、プレートを修正する事も必要になると思う。

エクステンション上のサムレストとG線側のスクロールチークの間も指を挟みやすい部分では無いかと思うが、エクステンションとスクロールチークの間隔は、ナットに近づくに従いどうしても狭くなるので、慣れるまでは注意が必要かもしれない。

試奏でついた指紋などを拭き取り、作業終了となる。黒檀部分の仕上がりは少しだけ艶消しにしてある。使い込めば、良く触る部分には艶がでて良い風合いになると思う。真鍮部分の色も落ち着いて渋くなるだろう。

2009年7月2日

C-extension (5)

真鍮パーツの加工を経て、カポの調整を行う。

弦への当たりや、開閉の状態などを見ながら、各音程ごとに形を合わせる。カポを閉じたときに、閉じた部分より上の弦がノイズを出さない事も重要だ。四角いカポは、何とも無骨だけれど、機能だけならこの状態でも使えない事はない。よほどの事情が無い限り、カポは片手で操作できた方が都合が良い。弦を指板側に押さえてからカポを閉める、というような余計なアクションが入らない方が、演奏者には都合が良いのではなかろうか。

カポの数に関して言うと、少なくともEのカポは有った方が良いのではないかと思うが、その他は、純粋に弾く方の好みではないかと思う。カポは開けてしまえば無いのと同じなので、半音ごとについていた方が、演奏が楽になるとは思う。しかし、オクターブの連続を弾くためにC#だけに追加したり、Dだけに付けたりといった選択肢もあり、自由である。カポを増やすと、その分の重量が増えるのでデメリットと言えない事もないが、機械式のエクステンションや、チューニングマシンの重さとの比較でいえば、ほとんど問題にならないレベルのように思う。

機能上の調整がすんだら、形を作ってゆく。カポは良く見えるし、直接手に当たる部分だけに、形もまた重要である。小さな世界だけども、例えば、面の処理などは、どこで始まり、どう繋がって、どこに消えていくのか、バリエーションは無限にある。オーナーの方の希望をお聞きして作業するが、ディティールをつくる楽しみを味わえるのは、作る者の特権かもしれない。