2012年5月24日

虫によるダメージ

喰われた部分の木が無くなってしまうため、虫によるダメージは大きい。

木目や木の繊維方向と無関係に食べ進むので、割れと違って不自然な傷の入り方になる。虫は、よりおいしい方へ向って進むのか。

表面に現れずに紙一枚下はトンネルになっている状態の虫穴では、力が加わるとあっさりとトンネルに沿って割れてしまう。ソフトケースについている金具が引き金になる事があり、この楽器の場合はそうであった。下にして置くときにストラップの金具が当たってしまう。楽器のCバウツ付近に金具が来るように作られていないケースでは、気をつけて楽器を置かなくてはならない。

失われた木を足す場合、内側から行う方が良い。しかし、コントラバスの場合は大きいだけに開閉のコストが問題となる。虫による被害以外のトラブルが積み重なっていれば開ける価値はあるが、今回はfを介する修理に加え、一部分のみ開けて修理を行う事にした。
虫穴部分を綺麗にする以外は全く木を削らないため、見栄えに多少難があるけれども、必要なら綺麗に除去できる修理なので、将来、開ける時に本格的な修理を行えば良いと思う。

修理後セットアップすると、反応が良く音量もあり明るく好もしい楽器だった。ラウンドバックであったが、裏板に魂柱を受けるベースが付けてあり、フラットバックのように魂柱を作る事が出来る。角度さえ正確に合えば、切り口を平面にできるので便利であった。


2012年5月9日

スクリューの穴

ボタンのスクリューの長さと、弓のスティックの穴の深さとは一致している方が良いのではないか。
一致していない弓も良く拝見するので断定はできないが。

一致していた方が良い理由の第一は、万一ボタンからスクリューが抜けてきた時、スクリューがスティック内部に入り込む可能性が有るからである。アイレットのmortiseより先の穴は、ネジ部分よりも細く開けられている事が多い。 スクリューが内部に入り込むと、内側からスティックを押し割る可能性が有る。

実際にそのようにして割れた事例は一度見た事がある。何故割れるのかが理解されていなかったようで、何度も修理されていた。

対策は、穴の底に木を入れて穴の深さをスクリューに一致させる。入れる木は、Pernambucoが良いように思うけれども、他のものでも構わないと思う。もし、入れた木が嫌なら、取り除く事は容易で、スティックも傷めない。

穴の深さとスクリューの長さが一致している利点は、万一の対策だけでなく、弓の毛のテンションを穴の底でも分散して受けるため、 ボタンとスティックが接している部分が摩耗しにくくなるということもあるようだ。写真のプレッチナーは2000年の新作なので、ボタンがオリジナルであれば、ひょっとすると、穴を深くする何か別な理由があるのかもしれない。

摩耗と言えば、スティックより柔らかい素材であれば、いわゆるラバー(プラスチック)のボタンは高級感では劣るものの、スティックの保護のためには利点となるのかもしれない。